FURUGI@BLOG

横浜在住のmooran(むーらん)が書く日記のようなもの。

普段読まない作家の本を読もう月間

本年の読書は、とりあえず『このミステリーがすごい!2007年版』
国内編ベスト10のコンプリートを目指してスタート。
なんと6冊が既読だったので、残り4冊を読めば終了〜。これは楽勝であります。
あとは、評判の良さげなモノも片っ端から。結局、手当たり次第かよ! そんな感じ。




佐々木譲『制服捜査』(新潮社)
制服捜査

警察官人生二十五年。不祥事をめぐる玉突き人事のあおりで、強行犯係の捜査員から一転、
単身赴任の駐在勤務となった巡査部長の川久保。「犯罪発生率、管内最低」の健全な町で、
川久保が目撃した荒廃の兆し、些細な出来事。嗅ぎつけた“過去の腐臭”とは…。
捜査の第一線に加われない駐在警官の刑事魂が、よそ者を嫌う町の犯罪を暴いていく、本物の警察小説。(amazonより)

佐々木譲が得意とする、(国を跨ぐような)壮大なスケールの事件が起こるんだろうなぁ……
と思っていた自分を待っていたのは、田舎の閉鎖的な社会がもたらす、ドロドロとした事件。
現実の事件をモチーフにしたのか、やけにリアリティがあって、かなりイヤ〜な感じ。


主人公・川久保は、元強行犯係の捜査員。それらの事件の本質を掴む。さすが!
……がっ、捜査に介入ができません! だって、彼は現在、駐在所勤務のお巡りさん。一介の制服警官だもの……(みつを)。


しかし、川久保は自分の刑事魂に則って、淡々と事件にアプローチしていく。
これは渋すぎる……。確かに、捜査の第一線に加われない、しかし大多数を占めているであろう
駐在警官が活躍する小説こそ、“本物”の警察小説だと言えるかもしれない。


てっきり長編かと思っていたので最初はビックリしたけれど、短編なのが逆に良かったと思う。
パンチ力はないけれど、サクッと読める全5編。『このミス』2位も納得かな。




桜庭一樹『少女七竈と七人の可愛そうな大人』角川書店
少女七竈と七人の可愛そうな大人

わたし、川村七竈十七歳はたいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった。
鉄道を愛し、孤高に生きる七竈。淫乱な母は、すぐに新しい恋におちて旅に出る。
親友の雪風との静かで完成された世界。だが可愛そうな大人たちの騒ぎは
だんだんと七竈を巻き込んで。(amazonより)

こちらは久しぶりの非ミステリ(ミステリ要素も少々あるけれど)。
圧倒的に悲しい読後感*1をもたらす恋愛小説であるが、地域社会や親子関係を描く現代小説でもある。


まぁ、そんな堅いことは抜きにしてだ、ともかく、物語を包み込む寂寥感が素晴らしい。
かんばせ、いんらんを始めとする言葉遣い、一話ごとに主観が変わっていく構成など、
随所に散りばめられた作者のセンスも楽しめた。そして、確かに切ない物語でした。


あと、鈴木成一デザイン室の仕事はやっぱり凄いな。カバーもいいけれど、
特にビックリさせられたのが黒い表紙。よく見ると、うっすらとレール模様が入っているヨ!






偶然だったけれど、2作品とも“閉鎖的な地域社会”が1つのテーマになっていたとさ。