FURUGI@BLOG

横浜在住のmooran(むーらん)が書く日記のようなもの。

雨の日の読書

皆川博子『倒立する塔の殺人』理論社) ※ミステリーYA!
倒立する塔の殺人 (ミステリーYA!)

戦時中のミッションスクール。図書館の本の中にまぎれて、ひっそり置かれた美しいノート。
蔓薔薇模様の囲みの中には、タイトルだけが記されている。『倒立する塔の殺人』。
少女たちの間では、小説の回し書きが流行していた。ノートに出会った者は続きを書き継ぐ。
手から手へと、物語はめぐり、想いもめぐる。やがてひとりの少女の不思議な死をきっかけに、物語は驚くべき結末を迎える…。
物語が物語を生み、秘められた思惑が絡み合う。万華鏡のように美しい幻想的な物語。(amazonより)

→読了。1930年生まれの作者が未だ衰えぬ筆致で書きつづった、耽美な幻想小説
戦時中の女学校や工場、ミッションスクールの描写と、作中作の幻想的な世界とのギャップが素晴らしい。
また、ゾクっときた一行もある。いい意味で“ミステリーYA!”ブランドらしくない作品。


ただし、トリックには期待しない方がいい。




東野圭吾『パラドックス13』毎日新聞社
パラドックス13

運命の13秒。人々はどこへ消えたのか? 13時13分、突如、想像を絶する過酷な世界が出現した。
陥没する道路。炎を上げる車両。崩れ落ちるビルディング。破壊されていく東京に残されたのはわずか13人。
なぜ彼らだけがここにいるのか。彼らを襲った“P-13 現象”とは何か。生き延びていくために、
今、この世界の数学的矛盾(パラドックス)を読み解かなければならない!
張りめぐらされた壮大なトリック。論理と倫理の狭間でくり広げられる、究極の人間ドラマ。
“奇跡”のラストまで1秒も目が離せない、東野圭吾エンターテインメントの最高傑作! (amazonより)

→読了。『漂流教室』と『○○○○○○○』*1を足して2で割ったような作品。
さすがのリーダビリティでグイグイ読ませてくれるが、類型的なSFの域を脱していないのが不満。
しかも、帯が謳っている“張りめぐらされた壮大なトリック”でひどい肩透かしを食らうとは思わなかったZE!


エンターテイメント小説としては理屈っぽく *2SF小説としては物足りない。*3 ラストは作者らしい。


東野圭吾エンターテインメントの最高傑作? はぁ? 冗談だろ?
過去作をちゃんと読んでから書けよ!




鬼頭莫宏『終わりと始まりのマイルス』#1(太田出版
終わりと始まりのマイルス1 (Fx COMICS)

鬼才・鬼頭莫宏が描く、キの満ちた不思議な世界――。


「この子は空に還る時だね」


万物が宙に浮いている世界オービスワーヌス=空環。そんなオービスでキ祈祷師を生業としながら、
巨大な戦艦から権化したキ神・ギカクと共に暮らすマイルス。キ物に込められた様々な“思い”を空に還します。(amazonより)

→やさしい雰囲気が心地よい、ファンタジー×ほのぼのコメディ。
陰鬱な作品が多い作者だが、この作品では警戒する必要はなし。
やたらとエロ話が多いが、実に微笑ましく、それがこの作品の味にもなっている。


ぜひ読んで欲しいのが、マイルスが傘を開いて読者をファンタジー世界へと誘う、導入部分。
メチャクチャ秀逸。あそこだけで、ご飯3杯はいけるね!



*1:某ホラー作家原作の某映画

*2:読者層を想定してのことだろうし、作者の理系魂が許さないだろうが、「そういう世界です!」という投げっぱなしジャーマンでエンタメを追及しても良かったんじゃないか?

*3:あえてスルーしている部分も多いとは思うが、ツッコミたくなる部分も多い