FURUGI@BLOG

横浜在住のmooran(むーらん)が書く日記のようなもの。

2010ミステリ・マイベスト5

「2010年のうちに書いておけよ!」第一弾、とりあえずミステリから。
昨年購入したミステリ新刊約100冊の中から、5作品をチョイス。




写楽 閉じた国の幻

写楽 閉じた国の幻

わずか十ヶ月間の活躍、突然の消息不明。写楽を知る同時代の絵師、板元の不可解な沈黙。
錯綜する諸説、乱立する矛盾。歴史の点と線をつなぎ浮上する謎の言葉「命須照」、見過ごされてきた「日記」、
辿りついた古びた墓石。史実と虚構のモザイクが完成する時、美術史上最大の迷宮事件の「真犯人」が姿を現す。

→「物語の整合性なんてどうでもいいよ、写楽の謎が解ければ!」と言わんばかりの豪腕炸裂。
近年は「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「鮎川哲也賞」での新人発掘が目立っていたという印象だったけれど……
やっぱり島荘はすごい。






隻眼の少女

隻眼の少女

古式ゆかしき装束を身にまとい、美少女探偵・御陵みかげ降臨! 因習深き寒村で発生した連続殺人。
名探偵だった母の跡を継ぎ、みかげは事件の捜査に乗り出した―。

麻耶雄嵩の5年ぶりとなる新作長編。ミステリ界の命題とも言えるあの問題を麻耶雄嵩麻耶雄嵩らしく料理。
つうか、何を書いてもネタバレになっちゃうよね、この作品。







叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)

叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)

砂漠を行くキャラバンを襲った連続殺人、スペインの風車の丘で繰り広げられる推理合戦、
ロシアの修道院で勃発した列聖を巡る悲劇…ひとりの青年が世界各国で遭遇する、数々の異様な謎。
選考委員を驚嘆させた第五回ミステリーズ!新人賞受賞作「砂漠を走る船の道」を巻頭に据え、
美しいラストまで一瀉千里に突き進む驚異の連作推理誕生。大型新人の鮮烈なデビュー作。

→紀行文さながらの叙情的な異国描写。異国の特殊環境、価値観をベースにしたロジック。
これがデビュー作なのだから、ミステリ界の未来は明るい。






ジークフリートの剣

ジークフリートの剣

「あなたは、幸せの絶頂で命を落とす」世界的テノールである藤枝和行が念願のジークフリート役を射止めた矢先、
婚約者・有希子は老婆の予言どおりに列車事故で命を落とす。ジークフリート同様に“恐れを知らず”生きてきた和行だが、
愛する人を喪った悲しみのあまり、遺骨を抱いて歌うことを決意した。そして和行の前に現れた美女―。
今年度「本格ミステリ大賞」候補作家の渾身作。

→ラストで収束する物語とミステリ。タイトルの意味。感動作とはこういう作品のことを指す。
ミステリと芸術小説の融合を目指してきた作者の到達点ではないか。






折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)

折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)

ロンドンから出帆し、波高き北海を三日も進んだあたりに浮かぶソロン諸島。その領主を父に持つアミーナはある日、放浪の旅を続ける騎士ファルク・フィッツジョンと、
その従士の少年ニコラに出会う。ファルクはアミーナの父に、御身は恐るべき魔術の使い手である暗殺騎士に命を狙われている、と告げた……。
自然の要塞であったはずの島で暗殺騎士の魔術に斃れた父、「走狗(ミニオン)」候補の八人の容疑者、
いずれ劣らぬ怪しげな傭兵たち、沈められた封印の鐘、鍵のかかった塔上の牢から忽然と消えた不死の青年――
そして、甦った「呪われたデーン人」の襲来はいつ? 魔術や呪いが跋扈する世界の中で、「推理」の力は果たして真相に辿り着くことができるのか?
現在最も注目を集める俊英が新境地に挑んだ、魔術と剣と謎解きの巨編登場!

→中世イングランド、エンターテイメント、そして本格ミステリの融合。
少数意見なのは分かっているけれど、作者は青春モノよりもこちらを本路線にしてくれないかなぁ。






次点、三津田信三『水魑の如き沈むもの』、七河迦南『アルバトロスは羽ばたかない』、近藤史恵『エデン』、初野晴『空想オルガン』、小島正樹『扼殺のロンド』。


水魑の如き沈むもの (ミステリー・リーグ)

水魑の如き沈むもの (ミステリー・リーグ)

アルバトロスは羽ばたかない

アルバトロスは羽ばたかない

エデン

エデン

空想オルガン

空想オルガン

扼殺のロンド (ミステリー・リーグ)

扼殺のロンド (ミステリー・リーグ)







短編では、麻耶雄嵩『貴族探偵』の「こうもり」、東川篤哉謎解きはディナーのあとで』の「花嫁は密室の中でございます」が印象に残った。
前者は卒倒しそうになる強烈なミスディレクション、後者は泡坂妻夫マインドを感じる鋭い切れ味。


貴族探偵

貴族探偵

謎解きはディナーのあとで

謎解きはディナーのあとで





(関連)
2009ミステリ・マイベスト5(2009/12/30のエントリ)