FURUGI@BLOG

横浜在住のmooran(むーらん)が書く日記のようなもの。

マイナス方面の「うーん」

道尾秀介『片眼の猿 One eyed monkeys』(新潮社)
片眼の猿 One‐eyed monkeys

警[Caution!]告
まず断言してしまいます。
どれだけ眉に唾を付けて読んでいただいても、著者の企みを
100パーセント見抜くのは不可能でしょう。
どうぞ、目一杯期待して読んで下さい。そして、驚いて下さい。
さらに、トリックとテーマが分かちがたく結びついていることに感嘆して下さい。
「やられた」だけでは終わらせない、名手・道尾の最新ステージ、堂々開幕!(裏の帯より)



ミステリ界に現れた期待の新鋭、道尾秀介の最新作。
268ページだが、文字がデカいので文字量はあっけないほど少ない。*1
約2時間であっさり読了。以下、若干ネタバレなので注意されたし。






リーダビリティを維持しつつ、超・絶・技・巧*2を凝らしている作者の文章は素晴らしい。
初読時と再読時で2度楽しめる。……トリックだけは。




ぶっちゃけ、「やられた」という気持ちがまったく起こらない。
確かに、意外や意外、世界が反転するようなトリックが炸裂しているのだけど、
自分が対して興味を抱いていなかった別世界が反転しているので、まったく効果的ではない。
なので、自分の受けた衝撃も「ふーん」といった程度。




ストーリーは悪くない。むしろ好きな部類かも。そして、トリックも素晴らしい。
でも、どう見てもハズしている。


読了後、その出来映えに唸る「うーん」ではなくて
?マーク入りの「うーん」という心境になってしまった微妙な作品であります。ちと惜しい!





さらに、トリックとテーマが分かちがたく結びついていることに感嘆して下さい。

あと、裏の帯のこの文言だけどさ……。野暮じゃね?
トリックとテーマが分かちがたく結びついていること、それに読者は自発的に気づいてこそ、
「うまいタイトルを付けたもんだ」と感嘆するんだ! わざわざ帯に書くんじゃねぇよ!!
そもそも、“警[Caution!]告”って何だよ!!!






……過剰な煽りは、読者に余計な期待を抱かせる。その結果、読者は余計な肩すかしを食らう。
商業的に成功するためには必要なのかもしれないが、読者にとってはいい迷惑じゃないだろうか。



*1:ケータイで配信されていた小説とのこと。納得

*2:表の帯より